デザインへの誤解
デザインと聞いて、多くの人の共通認識は「格好の良いもの」「お洒落なもの」を連想するだろう。
ではデザイナーと聞いて連想するのは、「センスのいい人」「アイデア豊富な人」、ではないだろうか。
もしそういう認識があるなら、その認識は、大きな大きな、大変大きな、間違いである。
出来上がったモノが、オシャレであったり、カッコいいモノに越したことはない。
作る人間に、美的センスがあって、アイデアが豊富であることに越したことはない。
センスが良くカッコいいに越したことはないし、結果的にそうなったとしても
それを作ることが目的はないということだ。
デザインと聞いて何を考えるか
「車椅子のデザイン」
こんなお題のデザイン案件があったとしよう。
あなたなら何を考えるだろうか。
一般的な考え方
- カッコ良くするにはどうするか
- インパクトを出すためにどうするか
- オシャレに見せるためにどうするか
- 人の目に止まるためにどうするか
- カラーリングをどうするか
- スタイリッシュにするにはどうするか
多分こんな感じで発想していくと思う。
では、デザインを職業にしてる人は何を考えてるのか?
多分、自分と同じように考えるんだろうけど、
元々のセンスのいい人はきっと洒落なモノを作るんだろうな~
なんて思うかもしれない。
では実際デザイナーは何を考えて仕事をしているのか。
デザイナーの考え方
- なぜ車椅子のデザインが必要なのか。
- 車椅子の使用環境でどんな問題があるのか
- それを使用し続けることでどんな弊害があるのか
- 間接的に起こり得る問題は何か
- 車椅子に乗る人に不具合が生じてるのか
- または車椅子を押す人に不具合があるのか
- それとも車椅子をしまうときに問題があるのか
- 天候によって不具合が起きるのか
- 特定の状況下で問題があるのか
など、ざっくり出しただけでもこんな感じだが、まだまだ確認事項は出てくる。
デザインと必要性
ではデザインとは何かを定義しよう。
デザインとは問題を解決することである。
もっとわかりやすく言えば、デザインは必要性の上に成り立っている。
問題がなければデザインは必要がないということ。
そして、お洒落でカッコいい物を作ることが目的ではないということだ。
車椅子を日常的に必要としている人にとっては、格好の良さよりも
「もっと軽かったらいいのに」「もっと行動範囲が広がったらいいのに」など
重要度の高い問題の、解決をすることが必要なのである。
ただ、車椅子の問題を見定め、その問題を解決した成果物が結果的に「カッコいい」ということがある。
そこが、「デザイン=カッコいいモノを作ること」と勘違いされやすいの要因である。
あくまで格好のよさは最終的にスタイリングを整える表層的な部分であることが多い。
そして自分の好きな柄や模様で、何かを作ることではないということを、声を大にして伝えておきたい。
そうは言ってもあくまで問題の解決をする上で、スタイリングが機能的に重要な場合がるが、その説明についてはどんどん話が長くなるので、ここでは割愛する。
格好良くする事が本来の目的ではないのに、
良いデザインはナゼ格好も良いのか。
それは根本的な問題を解決し、機能性を保ってる上で、最終的にスタイリングも手掛けるからである。
良いデザインは、秀逸な機能性で構成されてるがゆえに、美しさを感じるのだ。
その問題は本当に問題なのか
ここで大事なのは、「何が本質的な問題なのか」ということだ。
この「何が本質的な問題なのか」を突き止めること。これがデザインの第一歩である。
そしてその解決策を形にしていくまでが一連の仕事内容である。
デザイナーの仕事は、イラストレーターが使えたり、フォトショップが使えたり、CADが使えたりではない。
社長や上司に言われるままに何かを作ることではない。それはだけではソフトを使うだけのオペレーター業務である。
本質的な問題を理解し、解決策を探り、根拠をもって形にする。
これがデザイン思考にというものに直結することを理解してほしい。
まとめ
- 本質的な問題、間接的に起こりうる問題などを深堀りする。
- 問題を解決する解決策をより多く出す。
- 解決策のコストやリスクを考察する
- 極めて有効な解決策に絞り込む
- 問題と解決策を全て明文化(テキスト化)させる
- プロトタイプやラフで可視化する
- ブラッシュアップを繰り返し完成形にする。
- PDCAを繰り返す。
最後にまとめだが、ここでもっとも大事なことは、「⑤問題と解決策を全て明文化させる」である。
文章で言い表すことは極めて重要で、曖昧さを回避するために、必ずテキストにしなくてはいけない。
テキストにすることで、この形になった理由。このレイアウトになった理由。この色にした理由。この素材にした理由など、明確なデザイン根拠が記され客観的な理解が得られやすくなるからだ。
間違っても「なんか○○をイメージしてこんな風にしてみました。」という、よくわからない説明ではいけない。
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